磨きと返し 

革を裁断した端の部分をコバと呼びます。革を切り貼りして縫製する革製品にはコバが必ず存在します。

そのコバを切りっぱなしにせず、見た目良く処理する方法に「磨き」と「返し」があります。

さらに、ややマイナーですが「トリミング」という方法もあります。

これらについて詳しく説明します。

磨き

革の断面をカンナやヤスリなどで整え染色などして仕上げる方法を「磨き」と呼んでいます。

ふのりを使ってツヤを出し、蜜蝋を染み込ませる事で耐久性を上げます。

一枚で磨くこともあれば複数枚を貼り合わせて磨くこともあります。

磨きで仕上げたコバは主に固めのタンニンなめし革で用いられます。摩擦に強く磨き直してツヤを取り戻すことができます。

「切り目本磨き」などと呼ばれる大変に手間のかかる磨き方もある一方で量産品のほとんどはコバ処理剤で塗られただけの処理がされています。

へり返し

「返し」はコバの部分を断面にせず、折り返して裏側まで回して処理する方法です。

通常「へり返し」と呼ばれます。

一枚で返すこともできますが大抵は裏打ちなどと貼り合わせてから返されるものです。

一枚で返したものを表裏にニ枚貼り合わせる「返し合わせ」という方法もあり、鞄のショルダーの部分などに使われます。

トリミング

コバの部分を別裁ちのパーツを使って包むように処理したコバを自分は「トリミング」と呼んでます。

鞄の口元に使われることが多いですが、小物にも使います。

トリミングの特徴はパーツを交換できることです。

コバの部分が傷んだ時に「磨き」は磨きなおし、「ヘリ返し」は革が切れてしまうと綺麗には直せません。

「トリミング」はパーツを交換することで修理できます。

見た目上、コバの部分が厚くなりがちで好みの分かれるところです。

まとめ

いわゆるコバ処理と言われる端の処理ですが、見た目の好みと実用性の要素も関係します。

男性に多いスボンのポケットに財布を入れる方は磨きの財布が適している気がします。摩擦に対する耐久性が高くポケット内で磨かれることによってツヤが増すこともあります。

鞄の口元のトリミングは修理しやすくパーツを作り直すこともできます。

ハンドル類にヘリ返しを使うのは手に当たる角を無くし見た目良く仕上げるためです。

量産品の多くに切っただけのコバにコバ処理剤なる樹脂塗料を塗っただけの製品があります。色鮮やかで高速に作業できることで普及していますが、秀革堂では使っていません。いずれはがれるであろう革以外のものでコーティングしても耐久性と見た目、共に満足できなと思うからです。