【アリゾナ】バケッタ製法による美しいシボの経年変化

秀革堂で定番にしている革にアリゾナがあります。

他の作家さんがアリゾナのオレンジ色で作ったものをブログにアップしていて、良い色だなぁと思ったのがきっかけです。鮮やかだけど派手過ぎない茶色に近いオレンジ色だと思いました。

自分はリスシオよりシボやシュリンクの入った革が好きなのでさっそく使ってみました。果物のオレンジというより紅葉した楓の葉といった感じでしょうか!?ブッテーロのオレンジに似ていると思います。他の色も魅力的です。

アリゾナの魅力

アリゾナ(ARIZONA )はイタリア・サンタクローチェのタンナー、コンチェリア・ラ・ブレターニャ社(CONCERIA LA BRETAGNA)のタンニンなめし革です。経年変化の大きさに特徴があるバケッ夕製法によりなめされています。バケッタ製法はトスカーナ地方のタンナーで受け継がれている製法で、牛脂、魚脂などを革の奥深くまで浸透させる非常に時間と労力がかかる製法です。

経年変化に定評のあるアリゾナは使い込むと色が濃くなって艶が増します。使い込んだアリゾナをいくつも拝見しましたがどれもかっこいいエイジングをしてました。カラー展開は多くないものの、ひとつひとつのカラーにセンスの良さを感じます。特にターコイズグリーンやトープはとても気に入りました。いずれ全ての色を使ってみたいです。

アリゾナはシボ革です。シボがとても綺麗に出ています。このシボは「揉みシボ」と呼ばれるシボです。シボ革にもいくつかあって、薬品で収縮させる「シュリンク」、シボの模様を押し付けて残す「型押し」、タイコと呼ばれる機械で回転させながら揉む「揉みシボ」などです。

揉みシボの革は自然な風合いが魅力であるものの、シボが不規則過ぎたりシボの無い部分が多かったりする革をよく見かけます。シボの部分が少ないと取り分が悪いですし、不安定過ぎると見た目があまりよくありません。アリゾナのシボは一目見て気に入りました。美しく安定していて比較的端の方までシボが入っています。

この革は非常にしなやかな革で、少し扱いにくいと思いました。内縫いの鞄や小物には向いていると思いますが柔らか過ぎるので磨きにくかったりします。手帳や胴版の大きめな財布などには裏打ちをして張り感と剛性を出しています。

あと、柔らかいヌメ革にしてはキズが付きにくいと思いました。爪で引っかいたりしてもキズがあまり付かないし、手で触っているとすぐに目立たなくなります。

アリゾナの作例

アリゾナは柔らかいので張りのある革と組み合わせて使うようにしています。胴版が大きい場合には硬めのヌメ革を裏打ちしています。アリゾナの一番の魅力はシボの美しさ。美しい揉みシボが均一に入っていて良い雰囲気に仕上がります。