【手縫い】の手帳はどのように作られるのか

秀革堂では手縫いの手帳を色々作っています。ハンドメイドと呼ばれる革製品は色々ありますが手縫いしているものは少ないと思います。手帳ならではの特徴、工夫、考え方もあります。先日完成した手帳の製作過程を追いながら手縫いならではの作り方や考えなどを紹介できればと思います。

下準備

料理でいうところの「仕込み」みたいな感じでしょうか。自分の場合は革の切り出しと漉きがそれにあたります。粗裁ち用の型紙に合わせてケガキ線を入れます。革の表情の良い部分、キズや汚れの無い部分を繊維の方向を考えて割り当てます。特に大きく曲がる部分は繊維の方向が大切になります。

多くのメーカーはもちろん個人の作家さんでも今は抜き型を使って切りだすことが多いようです。コーナーのRはもちろんパーツ用の穴や抜きまで一度に切り出すことができるので便利なのは間違いないです。秀革堂でも以前シンプルな抜型を製作してもらって使ったこともありますが、今は革包丁でひとつづつ切りだしています。

なぜなら作るたびに発見やアイディアが見つかります。抜型でサイズを決めてしまうとそれらを反映させづらいからです。「もう絶対に改善点は見つからない」「100%完成したデザインである」と思える時が来れば抜型を作るかもしれません(笑)。

切り出した革は素材ごと、厚みごとに分けて革漉き機で調整します。良い革製品にするためには革の厚みを調整する漉きという作業がとても重要です。そして適切な厚みを判断する経験値がさらに重要だと思っています。そのための試行錯誤に時間をたくさん使おうと考えています。

パーツ類

手帳でいうパーツとはストラップやそれを受けるホール、ペンホルダーなどです。これらのパーツ類から作り始めることが多いです。ストラップには硬いヌメの芯を入れることで耐久性と立体感のある仕立てにできます。ホールにも同じく芯を入れています。

入れた芯によってできる段差部分を手縫いすることでふっくらした高級感のあるストラップやホールが作れます。これらのパーツはリネンと呼ばれる麻糸に蜜蝋を染み込ませたものを使い、手帳本体よりも細かいピッチで縫っています。自分はステッチを目立たせるのが好きなので指定の無い場合は生成りや革の補色を使う事が多いです。

曲がったパーツは曲がったまま貼り、曲がったまま縫うことで型崩れしずらい耐久性のあるものになります。ペンホルダー部分はコシのあるヌメ革を貼り合わせて作ります。

手帳本体

いよいよ手帳本体ですが左右のポケットと中央のリング当てを先に仕立てます。左ポケットは二段になっていて上段は三連のカードホルダーです。バイブルサイズでは三連カードホルダーがシンデレラフィットするのです。右ポケットにはペンホルダーとメモが差し込めるコーナーポケットが付きます。ペンホルダーはポケットの表と裏の間の空間に作った格納部分に収納されます。

今回の手帳製作で一番手間の掛かるのが中央のバインダー金具の乗るパーツです。厚いと金具が上手くセットできないので薄い革を使いますが、一体になったリング当て部分は厚みが必要なので裏へ折り返して縫い付けます。最後にバインダー金具をセットした時にすぐ隣にあるステッチと並行が出ていないとカッコ悪いので慎重に作ります。

手帳の本体部分で胴版と言われる革です。表の胴版にはストラップホールを取り付け、外れないようにしっかりと縫い付けてから裏胴版と貼り合わせます。画像のように表と裏で違った色、違った素材で作るのが好きです。異なる質感が楽しめるし組み合わせも無限大だからです。

すでに作っておいた左右のポケットを合わせてから表裏の胴版を貼ります。この時の曲げ具合で完成度が大きく変わるので気が抜けません。ストラップは縫い付ける直前に胴版に差し込むのでこの段階では取り付けません。

手縫いの製作ではミシン製作には無い目打ちと呼ばれる工程があります。縫う前にあらかじめ縫い穴(目)を空けます。この目打ちの精度がそのままステッチの精度になります。パーツの段差の部分や他のステッチとのつながりなどを考えながら目打ちします。

外周をぐるっと一周手縫いする工程です。一般的に本体の外装と内装を表胴版と裏胴版などと呼びますが手帳などの場合は内装を裏と考えて作ると不都合が生じます。両面に斜めステッチを施すことで開いても閉じても表裏を感じさせない高級感のある仕立てとなります。

最終工程はコバと呼ばれる裁断面の磨きを行います。染料で色づけしたコバを布海苔と蜜蝋を使って磨きます。布海苔は海藻から抽出したエキスで、食用はもちろん古くから織物や漆器、文化財の修復などに使われてきたものです。磨きは布海苔を使った磨きと蜜蝋を使った磨きを数回繰り返す大変に手間と時間の掛かる作業です。磨き終えた手帳にバインダー金具をセットすれば完成となります。

完成した手帳

落ち着きのあるオレンジと内装のダークブラウンが良くあっていると思います。表装のシボ革と内装のスクラッチレザー2つの質感が楽しめる作りです。糸はブラウンにもオレンジにも映える生成りと言われる未染色の白を使いました。

手で強く押さえずにしっかり開くのが理想です。閉じる動作の時にペンホルダーとリフィルが干渉してシワになるのが嫌なのでペンホルダーは外向きして一方はポケット内に入り込む構造です。

今回製作した手帳に使ったバインダー金具はリング径が25ミリと大きめのものです。このサイズですとリング内ペンホルダーの装着が可能になります。アシュフォードなどによくあるアレです。リング内の中央にペンが来るように設計されているのでリフィルがあっても引っ掛かることなくご使用いただけます。

左手が3連カードホルダーの2段ポケット、右手に可動式ペンホルダーとコーナーポケット付きポケットがあります。

色違い素材違いなどご希望があれば製作できますのでインスタのDMから理想の手帳を教えてくださいね。

ではまた。